保育ai
無藤先生インタビュー振り返り

こどもの成長を期間で振り返る重要性

2025.11.27
LINEで送る
保育ai
保育ai
ルクミー小林

本日はお忙しい中、インタビューにお応えいただきありがとうございます。
先日、保育をどうしよう未来会議(※2025年秋実施)でのご講演で「記憶は記録のためにあるわけではなく、記録を通してこどもの様子から学びの深掘りを振り返る手立てに使う」というお話がございました。

特に、「保育者同士で共有し合い、記録を簡単に習慣化すること、そして時には長い時間をかけてこどもの活動を振り返ることも大切だ」という点が心に残っています。

今回は、その記録の振り返りについて、さらに深掘りしてお伺いできればと思います。

まずひとつめのテーマについての質問ですが、「期間で保育を振り返ることがより良い振り返りになるために、日々の記録で意識すべきポイント」例えば、連絡帳や日誌を記録する際の工夫、写真の撮り方について専門的な視点からお聞かせいただけますでしょうか?

保育ai
無藤先生

保育は常に進行形であり、こどもの様子に応じて日々、あるいは週、月単位で計画を調整していく必要があります。例えば、今年の夏は例年以上に暑く、プールの実施が難しい日が多くありました。このような状況では、当初の年間指導計画通りに進めることは難しく、柔軟な対応が求められます。そして、その調整の際に重要になるのが、こどもの様子を深く考えることです。しかし、記憶だけに頼ると、印象に残った子に偏りがちで、見逃してしまう子も出てきます。特に、0歳児クラスのように個別対応が中心の時期はまだしも、4歳児クラスのように集団活動が増え、こどもたちが園庭に散らばって遊ぶような場面では、一人ひとりの様子を把握するのは非常に難しいのが現状です。

この10年で、写真を活用した簡単な記録の仕組みが開発され、普及してきました。しかし、今度は「写真が多すぎる」という問題も出てきています。デジタルカメラの普及により、気軽に写真を撮れるようになった一方で、膨大な写真の中からこどもの成長のポイントを見つけ出すのが難しくなっています。

そこで、日々の振り返りだけでなく、2週間、あるいは小学校の学期のように3ヶ月といった少し長いスパンでこどもの成長を振り返ることが重要になってきます。日々の細かな動きを大きなトレンドとして捉えることで、こどもがどのような点で伸びてきたのか、あるいは伸びが芳しくない面はどこかが見えやすくなります。

保育ai
ルクミー小林

なるほど。

保育ai
無藤先生

先生方は頭の中で振り返りを行っていますが、やはり記憶がごちゃごちゃになったり、忘れてしまったりすることもあります。そこで、成長の記録や日々の記録を見直すわけですが、日々の記録が充実していれば、それが積み重なり、振り返りの質も向上します。

近年では、AIの助けを借りて、この記録の整理と振り返りが格段にやりやすくなってきました。AIが1ヶ月や2ヶ月の成長のポイントを要約したり、鍵となる活動と関連する写真を抽出したりすることができます。さらに、クラス全体だけでなく、Aちゃん、Bちゃんといった個々のこどもごとに記録を整理することも可能です。

特に、複数人で遊んでいる写真の中から、一人ひとりのこどもを認識し、分類する技術も向上しています。これにより、保育の振り返りは「日々」「短期(2週間程度)」「長期(3ヶ月程度)」の3段階で、より具体的に、そして実際の記録に基づいて行えるようになってきています。AIによるサポートがあることで、先生方の漠然とした印象だけでなく、多様なこどもの活動記録に基づいた、より客観的で質の高い振り返りが可能になってきたと言えるでしょう。

保育ai
ルクミー小林

質問です。年少児クラスからは連絡帳がなくなりますが、保育者の記録が個人のこどもをしっかりと記録するにはどのような点に注意した方が良いのだろうと思いました。

また、私は娘が2歳児クラスと4歳児クラス(年中)におり、4歳児クラスになるとクラス全体の活動に目を向けた写真が多く、自分の子が映っていないと不安になることがあります。連絡帳がない分、個人の記録や写真の撮り方でも工夫できることはありますでしょうか?

保育ai
無藤先生

はい、その点は現在改善が進み始めた段階だと思います。0歳から2歳くらいまでは、保育自体が個別的なので、必然的に一人ひとりの写真が多くなります。Aちゃんがこうしていました、といった形で保護者の方に伝えれば、連絡帳に近い役割を果たせます。

しかし、4歳児くらいになるとグループ活動が増え、園庭など広い場所でこどもたちがバラバラに活動することも多くなります。そうなると、毎日一人ひとりのこどもにフォーカスした写真を撮るのは難しくなりますし、保育者さん一人あたりのこどもの数も増えているため、現実的ではありません。

保育ai
ルクミー小林

確かにそうですね。

保育ai
無藤先生

そこで私が現場で助言しているのは、1週間単位で、どの子も主役になるような写真を意識して入れることです。先生方は担当のこどもたちの顔を覚えていますから、昨日はAちゃんが中心だったから今日は違う子を見てみよう、というように心がければ、1週間あれば大体のこどもをカバーできます。これを保護者に伝えれば、自分のこどももきちんと見てもらえているという安心感につながるでしょう。

もう一つは、全体を俯瞰するような写真を撮り、そこに個別のコメントを添える工夫です。例えば、遠くに小さく映っているこどもの写真でも、「〇〇さんは今日、このグループに入って何か工夫を色々考えていました」といった具体的な言葉を添えることで、保護者にも伝わりやすくなります。

保育ai
ルクミー小林

確かに...!そのように保育者から伝えられると自分のこどもに焦点が当たったように感じ取れますし、保育としても記録も良さそうですね!

保育ai
無藤先生

現在はまだ手間がかかる部分もありますが、AIの音声入力機能が進化すれば、この作業は格段に楽になります。先生が写真を見ながら「Aちゃんは鬼ごっこで頑張って走っていた」と口頭で入力すれば、AIがそれを文字に起こし、さらに適切な文章に整えてくれるようになります。これにより、先生方の時間節約にもなり、より語りやすく、説明しやすい記録が作成できるようになるでしょう。

保育ai
ルクミー小林

音声入力での整理が簡単にAIで入力する機能が普及すれば、状況がかなり変わるということですね。

保育ai
無藤先生

そうです。写真だけで全てをカバーする必要はなく、言葉で補うことが重要です。遠くに映っているこどもの写真でも、言葉で「滑り台の横で砂で絵を描いていたんです」と説明すれば、保護者にも伝わります。また、俯いているだけの写真でも、言葉でその時の状況やこどもの気持ちを補足できます。

一方で、言葉で全てを詳細に書こうとすると膨大な時間と労力がかかります。そこでは写真で5〜6人の様子を一目で伝えるという利点を活かし、写真と言葉が互いに補完し合いながら、こどもの成長を伝える記録を作っていくことが大切だと考えています。

保育ai
ルクミー小林

ありがとうございます。写真だけでなく、個別の口頭入力で記録をつけ、週に1回でもそれぞれ子にフォーカスした写真を入れてこどもの成長を伝えることで、保護者としては安心しますし、そういった視点の撮影の仕方だとしっかりとこどもの成長記録になりますね!

保育ai
無藤先生

はい、写真と短い文章はセットだと考えてください。それぞれ異なるメディアだからこそ、互いに補い合うことで、より豊かにこどもの様子を伝えることができるのです。

LINEで送る
ページTOPに戻る