ICTで監査対応工数を削減。保育士同士や保護者との情報共有・コミュニケーションの活性化も実現できた
- 連絡帳や園からのお知らせをデジタル化したことで、作成時間を削減しながら子どもの様子をより多く伝えられるようになった
- ICTについて後輩保育士から先輩保育士へ教え合う風潮が生まれ、園内のコミュニケーションが増えた
- 保護者も手書きでは伝えきれなかった家庭の様子を伝えられるようになり、より家庭に応じたきめ細かなコミュニケーションが可能になった
子どもや保護者、保育者、地域の人との心温まる「アタタカイヤリトリ」を大切にしている聖光会グループのひとつ、国立クムクム保育園さま。
ICT導入によって園に生まれた変化を、秋山園長先生にうかがいました。
情報共有が欠かせないからこそ、語り合う時間を確保する
国立クムクム保育園さまが日頃の保育で大切にしていることを教えてください。
子どもと子どもに関わる「人」、そして「語り合うこと」を大切にしています。
当園は複数のシフトを取り入れた勤務体系で、複数のクラスをチーム全員で保育するようにしています。
そのため、保育者同士の情報共有が欠かせないんです。
子どもの様子を伝え合い、それをもとに掘り下げて語り合うことが大切だと考えているので、語り合う時間の確保にも注力しています。
ICT化で情報共有しやすくなり、園内のコミュニケーションが活発に
国立クムクム保育園さまでは早くからICTを導入されていますが、導入前後で園内にどのような変化がありましたか?
園にはさまざまな変化が生まれました。
保育士、園長・主任などの管理職、そして先輩・後輩間のコミュニケ―ションという3つの観点からお話しします。
まず保育士の変化です。
保育士は、連絡帳を使って保護者の方とやりとりをしています。
保護者のみなさまがたくさんのことを書いてくださるので、保育士もそれに応えたいと、午睡の時間などを使って返信を書くようにしています。
それがデジタルになってからというもの、文章の入力も修正も紙で書くより簡単にできるようになったとのことです。
こうして書く時間が短縮されることで、保育士たちは当日の保育を振り返り、明日の保育を考えることに時間をかけられるようになりました。
また、日誌などの帳票もICTを使って記録していますが、デジタルなので他のクラスの記録も簡単に見ることができるんです。
そのため、新人保育士が先輩の書いた記録を見て、「どのように日誌を書けばよいか」を自主的に学べる点もメリットだと感じています。
※国立クムクム保育園ではキッズリーを利用しています
園長先生や主任の先生など、管理職の方々にはどのような変化があったのでしょうか?
ICT化でクラスの様子を把握しやすくなり、各クラスの保育士とのコミュニケーションをより丁寧に行えるようになりました。
紙だけを使っていた頃は、気になるクラスの様子を見たいときや保育士が使っていないと きに紙の記録を持ってきて、見たい日にちのページを探して読むという流れでした。
しかしICT化したことで、気になったときにいつでも各クラスの様子を確認できるようになったんです。
記録を確認しやすくなった分、見る回数も増えたと思います。
そのように現場の様子を把握しやすくなったことで、保育士にタイムリーかつ具体的な声かけができるようになり、コミュニケーションも増えました。
パソコンやスマートフォンがあれば、知りたい情報をすぐに見ることができて大変便利ですね。
主任も、見たい日にちの帳票をピンポイントで確認できるため、振り返りがしやすくなったそうです。
記入する際も、文章の入力や修正が簡単にできるので、「作成が楽になった」と言っています。
先輩・後輩間のコミュニケーションは、どのように変わりましたか?
ICTを導入して以降、保育士同士のコミュニケーションが豊かになったなと実感しています。
特に、先輩保育士から後輩保育士への「ありがとう」が増え、両者のコミュニケーションが円滑になりました。
というのも、保育については先輩保育士が後輩保育士に教えるという関係なのですが、ICTは若い保育士のほうが早く使い慣れるため、先輩保育士に教えられる場合もあるんです。
先輩保育士は、スマートフォンの使い方などでわからないことがあれば、後輩保育士に教えてもらっています。
そうやって教えてもらうことに対して、先輩保育士が「ありがとう」と伝えると、後輩保育士もまんざらではない様子で(笑)。
デジタルの記録を通して保育士同士で細かい部分まで情報共有できるようになり、語り合いや教え合う関係性が生まれているだけでなく、保育士同士の強みを褒め合い、伸ばし合うことにもつながっていると感じます。
保育士、保護者ともに子どもの様子を伝えやすくなった
ICTを導入したことで、保護者との関係に変化はありましたか?
保護者との風通しがよくなったと感じています。
ICTを導入したことで、保護者との会話のきっかけが増えたんです。
もともと当園では、保護者とのコミュニケーションを大切にしていました。
たとえば、保護者の方と会ったら挨拶だけで終わらせず、園での様子をひと言つけ加えるなど、会話することを心がけていたんです。
ICT導入後は、保育士がiPhoneで子どもたちを撮影し、園での自然体な様子を保護者に伝えるようになりました。
玄関に設置しているモニターでもその写真を投影し、お迎えのタイミングで保護者がその日の様子を見られるようにしています。
その写真を通して、保育士と保護者、保護者と子どもの会話のきっかけが生まれているんです。
また連絡帳をデジタル化したことで、保護者の方への急な連絡も、タイムリーかつ全員へ同時に通知できるようになりました。
子どもが休んでいる日の連絡や、電話するのを躊躇するような体調変化の第一報なども、以前より連絡しやすくなりましたね。
スマートフォンから簡単に連絡できる点も、とても便利で助かっています。
保護者の方も、手書きでは伝えきれなかった家庭の様子を毎日たくさん伝えてくれるようになりました。
デジタルに慣れている保護者世代には、紙より合っているのかもしれません。
このように、連絡事項をいつでもすぐに伝えられるだけでなく、子どもの様子をこれまでの何十倍も伝えられるようになったんです。
保護者の方が伝えてくださる子どもの様子も含め、多様な家庭に応じたきめ細かなコミュニケーションがとれるようになりました。
ペーパーレス化が進み、監査対応工数も削減
監査への対応にも、何か変化がありましたか?
帳票をデジタル化したことで、園からのお知らせやお手紙も含めてぺーパーレスになり、監査対応にかかる工数を削減できました。
これまでは監査の準備のために書類を探したり印刷したりしていましたが、ICT化によってその労力が減ったことは大きな変化です。
また、書類は一定期間保存が必要なため、紙で管理していた頃は、昔の資料の保管場所を探すのにも手間がかかっていました。
今ではデータで一元管理できるため、管理がしやすくなったと感じます。
監査を受ける際は、事前に市の担当者へ問い合わせをし、データの画面を見せて問題ないかどうか確認するようにしています。
大切にしたいのは「育ちのためのアップデート」
ICT活用を園に浸透させていくためのアドバイスをお願いします。
まずは、毎日作成する連絡帳や園からのお知らせをICT化するといいのではないでしょうか。
ICTを使って作成時間や手間が削減されることを実感できれば、徐々に浸透していくと思います。
今後、どのようなことにチャレンジしたいとお考えですか?
「育ちのためのアップデート」に挑戦していきたいです。
もちろん歴史も大切なのですが、日々変わりゆく環境に適応していく必要性も感じているんです。
保育者も、大切なことを守りながら進化していかなければなりません。
そのとき、「新しいことを知りたい」という気持ちは、保育を楽しむツールにもなると考えています。
保育の質を向上させるため、保育者が日々連携し、研鑽すること。
そして、当園の保育者たちが風通し良く「やってみよう」という気持ちでいられることを、今後も大切にしていきたいですね。
本インタビューは『スマート保育園・幼稚園・こども園通信』2021年度2月号にも掲載されています。
こちらからPDF版をダウンロードいただけます。
※Web版とPDF版で編集の都合上、一部内容が異なる場合があります。
※記載内容はインタビュー当時の内容です。
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