保育園DXから始まる10年20年先のまちづくり~未来会議セッションより~

導入前の課題
  • 全庁のDXを考えると「どうせ変わらないんでしょ?」という空気感を変えたかった
  • 現場の課題を正しく理解するため、職員に本音で話してもらえる、信頼関係を築きたかった
  • 保育現場の本当に限られた時間での事務作業や、多くの手作業をDXで変えなければと思った
導入後の成果
  • ひとつの成功事例として、保育以外の事業への良い参考事例となった
  • 園を何度も訪問し対話を試みた結果、多様な困りごとを本音で話してもらえた
  • 給食のスタッフなども写真で共有をしてくれたり、園内の職員コミュニケーションがさらにスムーズになった
  • 保育現場の先生たちの意識が変わり「もっとこうできないか」という主体的な相談が来るようになった

市全体のDXを統括する立場から見た保育ICTのメリットや、導入の際に気を付けたこと、さらに、導入の結果、北上市でどんな好循環が生まれているかについて、北上市 企画部 都市プロモーション課 主幹 DXプロジェクト統括の大塚様にお話しをお伺いしました。

※本インタビューは2022年8月の保育をどうしよう未来会議のセッション「保育園DXが起こす、自治体変革の波」のレポートです。

北上市未来会議レポート表題

「どうせ変わらないんでしょ?」という空気を感じることもあり、そういった空気を変えたかった

まずは北上市とDXへの取組の背景についてお伺いできますか?

岩手県南部にある北上市は、約人口9万2千人の市になります。子育て支援に力を入れていて、市内の保育施設は43箇所、障がいのあるお子さんのための市の療育支援施設もあります。公立の学校がスポーツや音楽で全国トップクラスの成績を残していたりしており、各分野で一流の施設が揃っているんです。

そして市はDX推進にも力をいれており、北上市をより住み良い街にしていくためのDX推進の一環で、自治体DX推進リーダーを国の高度専門職人材活用の制度を利用して、民間から公募して昨年6月から採用しています。それが私なんです。

子育て支援分野の施策について、直近では、2022年7月22日から市公式の子育て世代向けのLINEのサービスがスタートし、保育施設に関しては2022年5月から、一部の園からルクミー登降園やルクミーおたよりの導入を開始しています。

DXというとさまざまな切り口があるかと思いますが、どうして保育からスタートしようと思ったのでしょうか?

実は当初「保育から着手しよう」と明確に決めていたわけではなかったんです。

ルクミーとの出会いは、転入手続きなど役所の窓口の記入業務をデジタル化するためのシステムを探すために訪れた、展示会でした。

もともと北上市では、障がいを持っているお子さんへの支援に力を入れています。その中で、療育施設の現状改善の相談を受けていて、その切り口を模索しているところだったので、そこにルクミーがうまくマッチするのではないかと閃いたのがきっかけです。

加えて、当時「DXを推進する!」という方針に対して、「どうせ変わらないんでしょ?」という空気を感じることもありました。そういった空気を変えたかったのですが、ルクミーをきっかけに現場で変革をおこせば、変えられると思ったからです。
そしてなにより、自分自身が息子が小さいころに1か月休暇をとって毎日保育園の送り迎えをしていた当事者として、「これがあれば保護者も便利になる」という確かなイメージが持てたので、ルクミーをきっかけに保育のDXから着手していこうと考えました。

保育に携わる現場の方々が「北上市で保育をやっていて良かった」と思っていただくために

導入前、大塚さんは何度も園に足を運ばれたんですよね?

保育DXと言っても、目的は保育に携わる現場の方々が「北上市で保育をやっていて良かった」と、保護者の方々が「北上市で子育てをして良かった」と思っていただくことだと認識していました。そのためには進めていく際に、現場でどれだけ本音でお話しいただけるかを心配していました。

保育施設視察のワンシーン1

そのためには、私自身が現場に直接行って、今の状態を正しく把握することが大事ですので、まずは「顔を覚えてもらうこと」を心がけました。

現場に直接足を運んでの現状把握は、導入後に現場の人だけでなく、市のステークホルダーなどに対しても、変化を実感いただき、「変わったね」と評価いただくためにも有効で良かったと思っています。

市の複数の園に導入していくために工夫されたことはありますか?どのように導入していったのか経緯について教えていただけますでしょうか。

最初にルクミーの説明会を療育センター長向けにセットした際に、センター長の声かけで、2人の公立保育園長先生が同席して開催しました。

その際に「これができるなら、こういう風に使えないか?」と現場リーダーが前向きに反応していることから、その気持ちを支援したいと思ったので、別途、園長会の場でICTの導入を考えている旨の説明をしました。

こうして、導入が決まるまでは各園長先生とお話していましたが、現場の先生の理解も早く得たいと思っていたので、導入が決まってからは実際に園にお伺いして、説明会を開催したり、Wi-fiや端末のセットアップ支援の機会を作りました。プロジェクトでは、「現場がうまく回らないと全体が回らない」ということを前職時代から強く感じてたので。

実際にお伺いすることで、私の担当外についても相談をしてくれたり、本音でお話しをしてくれる機会になっていたと今では思います。

「保育園の現場をなんとかしたい」という思いも強くなりましたし、「どうしたらより良くできるか」の改善アイディアを(現場で)引き出したりすることも意識するようになりました。

また、導入にあたっては、園ごとに個々の事情に合わせて導入スケジュールを立てて進めていくことにしました。画一的なスケジュールで規模も人数もことなる園のプロジェクトを進めるのは適切ではないと経験上、認識していましたから。

(複数園での情報共有は)先行して導入した園から出てきた導入時の情報や、各園から上がってくる質問に対する回答などを市のチャットツールを利用して、共有するようにしました。
最近は、朝のルクミー登降園の利用状況を私の方で(本部管理画面で)確認し、登園と降園を間違って押している状況や打刻漏れの保護者に気づいたら、チャットで園につたえたこともあります。運用の定着を実感できたりもするので、毎朝の確認は楽しみのひとつにもなっています(笑)

ツールの導入をきっかけに、現場の先生から前向きな改革意識が生まれた

ツールを導入してから、保育現場の先生たちについて何か変化はありましたか?

あくまで外側から見たことにはなりますが、いくつか変化がありました。

たとえば、これまで園が紙でお渡ししていた「園だより」は、保護者は紙で保管したくないので、写真を撮ってデータで保存し紙は廃棄していたのですが、そういうお互いに手間をかけてやっていたものが、今では最初からPDFで送るようになっています。

そして「園だより」や「クラスだより」が白黒からカラーになりましたね。写真が添付できるようになったことで、表現の幅が広がりました。それから、伝え漏れがあっても慌てずにオンラインのおたより機能で、連絡する手段も現場判断で行えるようになっています。

確認ボタンで、未確認の人にだけ追加で電話の確認がピンポイントでできるようになったりなど、保護者の方からも保育園が変化したことを実感していただけると思います。

連絡帳に関しても、提出が必須ではないクラスの保護者の方から、提出された連絡帳に「欠席連絡が楽になって、おたよりの写真で園の様子がわかってうれしい」というリアクションの声も聴きました。

ツールを入れることでコミュニケーションが減るのでは?という懸念の声をもらうこともありますが、逆にツールがあるからコミュニケーションが増えたような印象を持っています。

さらに、Wi-fi環境とタブレットに慣れてきた園から、園の行事をオンライン配信できないかと新しい相談が来ました。「これがダメになったので、代わりにこういうことができないか」という前向きな改革意識が出てきたことは、大きな変化だと感じています。

ツールの比較的得意な若い保育者がベテランの先生と一緒になって取り組みをしている姿を見て、好循環が生まれているなと思いました。
今先行して導入している園さんのこういった変化を、これから導入する園さんにも広げていくことで、定着のスピードが上がっていくんだろうなと思っており、市全体のDX推進をおこなうものとして、これからがますます楽しみです。

先生たちの意識が変わって生きたんですね。現場の先生以外の反応はいかがでしょうか?

保育者の方の変化を受けて、市のマインドも変わってきたように思います。

保育園DXを進めてきたことをきっかけに、先生たちが分からないとがあったら、すぐにチャットを使って質問するようになったり、園でオンライン会議を自発的に使うようになったんです。

すると積極的な質問を受ける側の私のチームでは、「なぜ今まで、こういった質問がなかったんだろう?質問できる雰囲気を作れなかったのかな?」と意識が変わった会話をしています。

ひとつ上手くいくと、前向きな気持ちが生まれるのでしょうね。働き方が変わり、時間の使い方が変わったのだと思います。

保育園でDXがうまくいったことで、それが市の別部門にも伝わり、結果として他の取り組みの後押しにもなっています。

保育施設は10年20年先の街づくりの土台になる素晴らしい場所

最後に、今後の展望についてお聞かせください。

「“うきうき” “わくわく”するまち北上」をテーマに掲げています。

現場に声を掛けながらチームで新しい取り組みをすることは、周りにも良い波及効果があります。

たとえば、保育の現場での欠席連絡。

今まで電話で連絡を受けていたので、朝は園に1本しかない電話回線が混むのは必然でした。また電話受ける側も電話番の人を置かなければいけないという習慣ができてしまっていたのですが、欠席連絡をアプリで通知うけることで解消すると、その状態が「新しい常識」になります。

実はそれが大事で、「楽になる」という実感をしてくれることよりも、「新しい常識」が定着することが次の変化の土台になるんです。

保育園に通う子どもはそのうち大きくなって小学校、中学校、と進んでいく。

保育園の時に保護者に便利さを知ってもらうことで、その先の小学校、中学校の不便を改革する下支えになってほしいと考えています。将来、新しい常識ベースに不便があったら市民から声を上げてもらうための準備ですね。

保育園で体験した「新しい常識」の人がたくさん増えてくると、5年、10年、20年かけて保育園だけじゃなく他のサービスや施策にまで「新しい常識」が広がっていく。そうやって、北上市がさらに「“うきうき” “わくわく”するまち」になっていくと思います。

そういう意味では保育施設は、街づくりの土台になっている素晴らしい場所ですよね。

今後もルクミーの導入をいいきっかけにして、さらに研修の支援や環境の整備などをどんどん進めていきたいです。

保育者の方が、「保育者になるなら北上が良いな」と思っていただけるとさらに嬉しいですね。

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