写真は、こどもの「育ちの物語」を伝える。30年以上続く「キッズアプローチ」に学ぶ、こども主体の保育
全国約340園で病院内・企業内・認可保育園を運営する株式会社キッズコーポレーションでは、創業以来「キッズファースト」を掲げ、創業以来30年以上にわたりこども主体の保育メソッド「キッズアプローチ」を実践されています。
同社が大切にしているのは、「何ができるようになったか」という結果だけではなく、挑戦し、迷い、失敗しながら成長していく一人ひとりのプロセスです。その考え方は、日々撮影する写真や記録にも息づいています。
今回は、写真を通じてこどもの育ちをどのように伝え、保護者とのコミュニケーションに活かしているのかについてお話を伺いました。
<お話を伺った方>
受託保育事業部 副部長 本田 里紗 様
品質管理部 保育品質管理課 松井 諭美 様

「キッズファースト」から生まれた、30年以上のこども主体の保育
この保育メソッドが生まれた背景や、最も大切にしている考え方を教えてください
キッズアプローチの原点にあるのは、創業当初から大切にしてきた「キッズファースト」という考え方です。こどもを大人の都合に合わせるのではなく、一人ひとりをありのままに受け止め、その子らしく育っていける環境をつくる。この想いは、創業以来変わることなく、私たちのDNAとして受け継がれてきました。
今では「こども主体」という考え方が広く知られるようになりましたが、私たちは30年以上前から、こどもが自ら遊びを選び、夢中になり、試行錯誤しながら育っていく保育を大切にしてきました。保育室にはさまざまな遊びのコーナーを設け、こどもが「やってみたい」と思える環境を整えています。大人が活動を決めるのではなく、自分で好きな遊びを選び、納得するまで取り組める時間を大切にしているのです。
また、保育者は必要以上に言葉をかけません。こどもが自分の思いを表現するまで待ち、その言葉を受け止める。大人の考えを先回りして伝えたり、こどもの言葉を上書きしたりしないことで、「自分で気づく」「自分の考えを伝える」という経験を積み重ねられるようにしています。私たちは、こどもには本来、自ら育つ力があると信じており、その力を信じて一人ひとりの育ちを支えることを何より大切にしています。
「こども主体」とは、こどもに任せることではない
「こども主体」とは具体的にはどのような保育を指すのでしょうか
私たちが考えるこども主体とは、「こどもに任せること」ではありません。こども一人ひとりをよく見つめ、「今、この子は何に興味を持っているのだろう」「どんなことに挑戦しようとしているのだろう」と考えながら、その子に合った環境や関わりを用意することです。
こどもはみんな同じようには育ちません。今日できるようになる子もいれば、一週間後、1か月後に気づく子もいます。だから私たちは、「みんな同じ」ではなく、一人ひとりの育つタイミングを大切にしています。保育者が急がせるのではなく、その子が自分なりに考え、気づき、「やってみたい」と思える瞬間を待つこと。そして、その挑戦を支えられる環境を整えることが、私たちの考える「こども主体」の保育です。
あえて手を出さない。失敗も学びに変える眼差し
あえて手や口を出しすぎない考え方もあると伺いました。その理由を教えてください
こどもが「助けて」と手を伸ばしたときには、私たちは迷わずその手を取ります。一方で、こどもは実は「自分でやってみたい」と思っている場面もたくさんあります。だからこそ、本当に助けを求めているのか、それとも今まさに自分の力で向き合おうとしているのかを丁寧に見極めることを大切にしています。
時には、保育者から見れば「このままでは失敗するかもしれない」と思うこともあります。それでも、安全が守られているのであれば、すぐには手を出しません。その失敗は、こどもにとって必要な経験だからです。思い通りにいかなかった悔しさや、「次はこうしてみよう」と工夫する時間、そして自分の力でできた喜びは、大人が代わりに与えることはできません。安心できる環境の中で挑戦を積み重ねること。その一つひとつが、将来、自分の力で人生を切り拓いていくための大切な「足場(スキャフォールディング)」になると私たちは信じています。
見守ったことで、こどもの成長を感じた印象的なエピソードがあれば教えてください
例えば、お友だちが遊んでいる玩具を取ってしまう場面があります。そんなとき、私たちはすぐに「返しなさい」「やめなさい」と注意したり、無理に「ごめんね」と謝らせたりすることはありません。その子は相手を困らせたいのではなく、まだ相手の気持ちに気づけていないことが多いからです。
そこで保育者は玩具を取ってしまった子に、「〇〇ちゃん、びっくりしたんだって」「きっとまだ遊びたかったんだね」と、玩具を取られた子の気持ちを言葉にして伝えます。私たちはこうした関わりを「実況中継(パラレルトーク)」と呼んでいます。一方で、玩具を取られた子にも丁寧に寄り添い、「嫌だったね」「まだ使いたかったね」と気持ちを受け止めながら、自分の思いを相手に届けられるよう支えていきます。
大切なのは、大人が正解を教えることではなく、こども自身が相手の気持ちに気づいていくことです。数週間後、あるいは1か月後に、以前は玩具を取ってしまっていた子が、自分から「貸して」と声を掛けたり、悲しそうな友だちの表情を見て手を止めたりする姿が見られることがあります。私たちは、その瞬間こそ本当の成長だと感じます。大人に言われたからではなく、自分の経験を通して相手を思いやる気持ちが育った証だからです。

写真・記録が支える、こども主体の保育
ルクミーフォトの写真や連絡帳のような日々の記録は、こどもや保護者にどのような影響を与えていますか
私たちの保育の現場では、こどもたちの遊びや生活の様子を写真で記録し、育ちを振り返る「ドキュメンテーション」という取り組みを行っています。これは単なる活動記録ではなく、こどもの育ちを保育者・保護者・こども自身が一緒に感じ合うための大切なツールとして活用しています。
最近では、保護者だけでなく、こどもたち自身も写真を見ながら「あのとき悔しかった」「〇〇ちゃんが助けてくれたね」と話し合う機会を設けています。自分が夢中になっていた姿や、一生懸命取り組んでいた姿を振り返ることで、「あのとき頑張っていたんだ」「前はできなかったことが今はできるようになった」と、こども自身が自分の成長を実感することにつながっています。
保護者にとっても、園で過ごす何気ない日常の中にある挑戦や葛藤、友だちとの関わりを知ることで、「こんなふうに育っていたんだ」という新しい発見が生まれます。運動会や発表会で「できるようになった姿」を見ることももちろん素晴らしいことですが、そこへたどり着くまでに何度も挑戦し、迷い、失敗し、それでも前を向いてきた日々の積み重ねこそが、その子だけの育ちの物語です。そのプロセスを保育者と保護者がともに喜び、こども自身も振り返ることができること。それもまた、こどもを真ん中に置き、一人ひとりの育ちを大切にする「キッズファースト」の保育だからこそ、大事にしている取り組みです。
まとめ:保護者の皆さまへ
保護者へのメッセージをお願いいたします
保護者の皆さまには、ぜひ安心してお子さまを園に送り出していただきたいと思っています。園では毎日、こどもたちが自分の「やってみたい」という気持ちを大切にしながら、友だちや保育者と関わり、たくさん遊び、たくさん挑戦しています。
私たちは、その遊びの一つひとつがこどもたちにとって大切な学びだと考えています。夢中になって取り組むこと、うまくいかずに悔しい思いをすること、もう一度挑戦すること、友だちと気持ちを通わせること。そのすべてがこどもたちの成長につながっています。
写真や日々の連絡帳を通して、ぜひ「何ができるようになったか」だけでなく、その過程でどんなことに興味を持ち、どんな経験を重ね、どのように成長しているのかにも目を向けていただけたら嬉しく思います。私たちはこれからも、一人ひとりの「自ら育つ力」を信じながら、その成長を保護者の皆さまと一緒に見守り、喜び合っていきたいと思っています。

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