未来会議レポート
AI時代に手放してはいけない保育者視点とは?野中こども園に学ぶ、保育ドキュメンテーションと対話で深めるこども理解
2026年03月17日

日々こどもたちと全力で向き合いながら、「保育記録の書き方に悩んでいる」「こどもの姿から保育計画をたてるのが難しい」と感じている保育者の方は多いのではないでしょうか。
今回は、2025年9月に開催した「保育をどうしよう未来会議」より、野中こども園 副園長・中村章啓先生による「対話と記録で深めるこども理解」の講演内容から、保育の質を高めていくためのヒントをご紹介します。
<登壇者のご紹介>
社会福祉法人 柿ノ木会 野中こども園 副園長 中村 章啓 先生
社会福祉法人柿ノ木会野中こども園・副園長。 日本大学芸術学部映画学科を卒業後、雑誌編集プロダクション、地方公務員等を経て、平成12年(2000年)から、野中保育園(現・野中こども園)に勤務。平成30年(2018年)から現職。保育コミュニケーション協会認定ファシリテーター講師。
こどもの「やりたい」を大切にするエマージェント ・カリキュラムと「卵と焚き火」のエピソード
野中こども園では、こどもの興味や関心を起点とした主体的な活動を保障する「エマージェント・カリキュラム(創発的カリキュラム)」を実践しています。
中村先生は、ある年長児クラスの「卵と焚き火」のエピソードを紹介しました。 園庭で野鳥の卵を拾ったこどもたちが「育てたい」と挑戦するも、殻が割れてしまう悲しい出来事がありました。しかし、その経緯を写真記録で保護者と共有したところ、保護者から鶏の有精卵と孵卵器の提供があり、再び命を育てる経験へと繋がります。 並行してこどもたちが試行錯誤していた「火起こし・焚き火」の遊びと結びつき、最終的には自分たちで育てた鶏が産んだ卵を、自分たちで起こした火で調理して食べるという豊かな学びへと発展していきました。
こうしたこどもたちの発想や意欲の高まりに対し、大人がタイミングよくサポートする「啐啄同時(そったくどうじ)」の保育を実現するために、同園が大切にしているのが「対話的な関わり」と「保育記録」です。
※啐啄同時(そったくどうじ):禅の言葉で、ヒナが卵から出ようと内側から殻をつつく「啐」と、母鳥がそれに呼応して外から殻をつつく「啄」が同時に合わさり、絶妙なタイミングで孵化を助ける様子を表した言葉。
負担を減らし、質を高める「保育ドキュメンテーション」と独自のワークシート活用
保育記録の重要性は理解しつつも、作成への負担感や心理的抵抗は多くの保育者が抱える課題です。単に文字数を減らして様式を統一しても、負担感は減らないと中村先生は指摘します。 そこで同園では、「保育ドキュメンテーション(写真記録)」と独自の「ワークシート」を組み合わせた手法を取り入れています。
写真記録+ワークシートで「こども理解」を深める
日々の記録は、その日のトピックを1つ(1人のこども、または1つの遊び)に絞り、数枚の写真と簡潔な文章でまとめます。 それと同時に、「乳児保育の3つの視点」や「5領域」「10の姿」をマインドマップ風に配置したワークシートを用意。エピソードから読み取れるこどもの経験をマーカーでチェックしていくことで、専門的な視点からのこども理解をできるようにしています。

写真付きのエピソード記録は直感的で読みやすく、保護者との関係構築(情動交流)に繋がるだけでなく、こども自身が自分の遊びを振り返るきっかけにもなります。
記録すること自体が「保育の振り返り」である
保育者は日々の保育の中で、こどもの姿に気づき、心の中で想像し、配慮し、関わっています。しかし、そのプロセスは無意識・無自覚に行われがちです。
中村先生は、「記録する(写真を撮り、記録を作成する)こと自体が、すでに保育を振り返る過程の一部である」と語ります。 「なぜあの場面でシャッターを切ったのか」「どんなこどもの姿に興味を持ち、何を想像したのか」を思い返す行為は、自分自身の関わりを俯瞰し、メタ認知するプロセスそのものです。
だからこそ、「このプロセスをAIなどに丸投げしてしまうことは、保育者の職能成長の機会を失うため危険である」と中村先生は警鐘を鳴らします。
AIを参考にするとしても、記録を通した「自分自身との対話」を手放さないことが重要です。
想定外を許容する「ウェブマッピング(保育ウェブ)」による計画
「指導計画」のあり方についても、変更を前提とした「仮説であり資源」としての計画をたてる工夫が行われています。
同園では、こどもの遊びの広がりを予想する「ウェブマッピング(保育ウェブ)」形式で週日案を作成。 黒字で「大人の見通し(仮説:〜かもね)や願い(〜なったらいいな)」を書き出し、実際のこどもたちの姿や遊びの展開を赤字でどんどん追記していきます。

大人の想像を超えるこどもたちの発想や、偶発的なハプニングを「予定外」とするのではなく、イメージをより豊かにする材料として取り入れる。ウェブマッピングは、そうした「想定外を許容する柔軟な枠組み」として機能しています。
「1ヶ月先のこどもの姿など分からない」という現場の感覚に寄り添い、無理なく見通せる「2週間サイクル」で計画と振り返りを行っています。
まとめ:丁寧な振り返りは、「保育の楽しさ」につながっていく
保育記録や計画は、監査や誰かに見せるために整えるものではなく、こどもの姿に驚き、共に喜び、次の保育環境を考えるための「対話の種」です。
講演の最後に、中村先生は日々現場で奮闘する保育者へ向けて、次のようなメッセージを送りました。
「保育は苦労も多く責任の重い仕事ですが、同時に楽しく、喜びの多い職業です。そのワクワクする楽しさをさらに深めていくために、日々の具体的なエピソードから学び続ける姿勢を大切に、ぜひ『感じて、楽しみ続ける保育者』であってください」
今回ご紹介した内容が、明日からの保育を語り合い、振り返りを深めるためのチャレンジのきっかけとなれば幸いです。
ICT・保育AIの力で「振り返り」を豊かにするパートナー『ルクミー』
今回の未来会議でも触れられた「保育記録を通じたこども理解」や「保育の振り返り」を、ICT・AIの力でサポートするのが、「ルクミー」です。
ルクミーは、日々の記録を単なるデータで終わらせず、こどもたちの成長を見える化し、次の保育に活かすための機能を備えています。
ルクミーフォトから簡単にドキュメンテーションを作成
撮影した写真にコメントやタグをつけ、保護者への共有や保育者間での振り返りに使えるストーリー(ドキュメンテーション)を簡単に作成・共有・印刷ができます。
保育AI「すくすくレポート」
保育者自身がルクミーに残した連絡帳や日誌、写真などのデータから、AIがこどもの成長を要約。振り返りや、次の指導計画を考える際、こどもの姿を具体的に思い出すヒントになります。ルクミーのAIが参照するのは、先生ご自身が残した記録です。そのため、レポートには記録の癖(視点)が反映され、レポートを読むこと自体が、記録の取り方を振り返る貴重な機会にもなります。
おわりに
中村先生も語られた通り、保育の主体は専門性を持った保育者です。ルクミーは「記録をAIに丸投げする」ためのツールではなく、先生方の豊かな気づきを支えるサポーターとして寄り添っていきたいと考えています。
なお、本記事でご紹介した講演を含む「保育をどうしよう未来会議」のアーカイブ配信は、2026年3月末までご視聴いただけます。ぜひこの機会にご覧ください。
未来会議のお申し込みはこちらから:https://info.lookmee.jp/miraikaigi/
ルクミーICT・AIに関するご相談はこちらから:https://lookmee.jp/lookmee_form.html
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