保育ICTラボ事業

帳票の一本化から始まった保育ICT 「オハナゆめ保育園柏の葉」の効率化と安全管理の工夫

2026年03月27日

保育の現場には、連絡帳、指導計画、日誌、引き継ぎ事項など、日々欠かせない帳票類が数多くあります。けれどそれらが「紙」「Excel」「Word」「別システム」と分散していると、記入の手間はもちろん“行き来”や“探す”負担がさらに積み上がります。

今回は、帳票類のICT化からスタートし、運用を磨きながら園全体の効率化と安全管理につなげてきた「オハナゆめ保育園柏の葉」の取り組みについて、園長の下田瑠璃先生にお話を伺いました。

「帳票をどうにかしたい」という代表の一言が保育ICTへの出発点

―保育ICTへの取り組みは、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。

下田:私が入職した頃は、連絡帳は手書き、指導計画などの帳票類はExcelで作っていました。そこに代表から「帳票類をデジタル化していきたい」と声がかかったのが始まりです。

たまたま、以前勤務していた園が連絡帳も保育ICTのサービスを利用していたので、「すごくラクになりますよ、むしろやりたいです」と伝えました。それが2019年ごろのことです。

“連絡帳だけ”では難しい、効率化は「全体」で起きる

―デジタル化と言っても幅が広いと思いますが、どの辺りから着手されたのでしょうか。

下田:「せっかく入れるなら、一本化できるといいよね」という考えがありました。この帳票はExcel、こっちはWord、これは別システム……と混在するくらいなら、最初からまとめたいなと。まず総合的に活用できそうな保育ICTのシステムを試験的に導入して、登降園まわりなどをデジタル化し、1年間試してみてシステムを切り替えるなどの調整を行いました。

―特に業務が効率化したと感じるのはどのあたりでしょうか

下田:正直、連絡帳だけをICTにしても、単独で見た場合には劇的な効率化は起きにくいと思います。手書きがPC入力に変わる、くらいの変化ですよね。でも帳票全体にシステムが入ると、入力した情報が記録になり、ほかに利用できたり管理も一本化できます。ここで全体として「ラクになった」と感じるようになります。

手書きの場合は、書いて、ファイリングして、鍵付きキャビネットに入れて…と何段階もの手間がありますが、クラウド保存ならその工程も不要です。保育ICTで一元化できれば、保管や検索も含めて全体的にラクになります。

どの部屋にいても確認できる!探さなくてよい環境

下田:帳票に加えて、大きなところではどこにいても情報にアクセスできることもメリットですね。紙の引き継ぎボードだとボードを持っている職員が別フロアにいたらすぐには確認ができません。でもアプリでクラウド管理していれば、PCやスマホがあれば、その場ですぐ見られる。これは現場の作業効率を大きく左右します。

たとえば「今日はお迎えが30分早い」なども、紙のノートだと開かないと分かりませんが、システムに入っていればいつでもどこでも一覧で見られる。事務室からも確認できるので、園全体の動きが揃いやすくなり、ミスや連絡漏れの予防にもつながります。

導入初期のハードルは「機器に慣れること」——でも“年齢ではない”

―職員の皆さんの反応はいかがでしたか

下田:機器やシステムに慣れるところからのスタートで、パソコンでのタイピング自体が初めて!という職員もいました。楽しんで慣れてもらいたいと思い、ゲーム感覚で練習できるサイトを紹介したり、職員どうしで教えあったりしました。

今はもう慣れており、運用で困ることはほとんどありません。導入当時から一生懸命使ってくれている、60代の先生もいらっしゃいますよ。

―導入当初の保護者の方の反応は?

下田:好評でした。デメリットや不満は特に出なかったです。保護者も「スマホでできるとラク」と感じたようで、とくに連絡アプリとしての使い勝手が受け入れられたと思います。

保育の質を支える「インカム」の採用

―保育の質や安全面で、効果を感じるシーンはありますか

下田:ICTという括りかは分からないですが、効果を感じているもののひとつにインカムもあります。大規模園や複数フロアだと、職員間の連携を音声でリアルタイムでできるのがメリットです。安全管理もしやすくなりました。

インカムも最初は土曜保育は少人数で1部屋なので、不要と思い装着していなかったのですが、避難訓練のときに「災害時対応を考えると、インカムがないと連携が弱い」と気が付き。土曜日は耳につけるのではなく、ハンズフリーで“部屋に1つ置く”運用にしています。このように、園の中でも常に運用もルールもアップデートしています。

―インカムならではの注意点があれば教えてください

下田:インカムを付けていると、こどもの声や人の声が聞こえづらくなることがまれにあります。大事な対応に入るときは「今外します」と言って装着を外します。ICTを導入して完了ではなく、その時々で適宜対応・調整をすることが大切と感じています。

「保育ICT活用」へのご理解を深め、より安心できる保育へ

下田:今後の課題として取り組みたいのは、ICTを活用する姿が保護者にどのように映っているか、という点です。第三者評価など匿名アンケートで、「パソコンしながら保育するのはやめてほしい」とお声をいただくことが稀にあります。

もちろん、実際には登降園管理やアレルギー情報の確認など、安全管理のために不可欠な操作を行っていますが、その意図が伝わりきっていないのだと感じています。

今後は「何のために端末を使っているのか」を積極的にお伝えし、ICTがあるからこそ、より手厚く安全な保育ができるという安心感に繋げていく必要があると考えています。

―今後、ICTやAIに期待することはありますか

下田:AIが、保育士にとっての“壁打ち相手”みたいになっていくといいと思っています。人は経験則の中で事実を組み立てがちで、決めつけにもなりやすい。AIが客観的事実や多様な視点を出してくれることで、自分の感覚・解釈に自然と疑いを持てるようになる。知識のアップデートにも使えるように思います。

【オハナゆめ保育園柏の葉が考える、導入のコツ】

導入成功のカギ:目的を先に置き、「全体」で効かせる

  • 連絡帳だけ、など部分導入では効率化が限定的になりやすい
  • 帳票や引き継ぎなどを含め、園内の情報を“一本化”すると効きやすい
  • 常に状況に応じて運用を調整・修正する 


オハナゆめ保育園柏の葉

  • 園児数:80名
  • クラス数:6
  • 保育士:16名
  • ICT導入時期:2019年4月ごろ~順次導入

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