ルクミー みらい保育スクール
ドキュメンテーションを通じた多様な視点の浸透で、新人も意見を言いやすい組織に
2022年02月15日
ルクミーが主催する保育施設向け実践型オンライン研修「ルクミー みらい保育スクール」では、園・施設の課題解決や保育の質向上を目指す先生方を、さまざまな研修プログラムでサポートしています。
その中のひとつである「往還型ドキュメンテーション活用」コースに参加されたのが、飯岡こども園の主幹保育教諭 木村先生です。
研修で学んだことをすべて取り入れるのではなく、園に合った形で導入できないか模索されているという木村先生。
新人研修にもドキュメンテーションを活用し、先生方にも変化が出てきたそうです。
どのような取り組みによってどう変わったのか、具体的なエピソードをうかがいました。
社会福祉法人 白楊
幼保連携型認定こども園 飯岡こども園
(岩手県盛岡市)
「ドキュメンテーション研修を職員研修へ」をチャレンジテーマに研修へ参加
研修に参加する前から、当園では写真を使って1日の保育の様子を保護者に知らせる取り組みを行ってきました。
しかし、「活動を知らせるため」として全体の様子をまとめた写真が多く、あくまで保護者に見せるための写真という印象。
そこから次の活動につなげることもありませんでした。
しかし研修を受け、現場の保育士がドキュメンテーションを作るようになると、活動の意味や経過、子どもの興味の移り変わりを知ろうとする写真が増えてきたのです。
撮影するなかで、保育者が子どもの興味関心を問いかける場面も増えたように感じます。
写真を使った振り返りを日常的に行うようになり、その一部を園だよりにも掲載するように。
写真を通して子どもを多面的に捉え、成長を見守ることにつながるとわかったため、園全体でドキュメンテーションの導入を進めました。
自園に導入しやすいよう「行事」のドキュメンテーション作りからスタート
ドキュメンテーションを導入するにあたり、まずは保育者が実践しやすい行事の一部で作成することにしました。
子どもの成長がわかるドキュメンテーションを作成し、保護者にも伝えられるよう園内に掲示。
すると保護者の方も目を留め、「こんなことがあったんですか」と担任の先生に話しかけてくださる機会が増えました。
写真を見て話ができる経験をしたことで、保護者も保育者も「このような活用方法があるのだな」と理解できました。
また、自分たちが実践している保育をしっかり伝えられることが、職員の自信にもつながっているように感じます。
ドキュメンテーションがあるからこそ、次の活動で準備すべきものが見えてきたり、活動の提案ができるようになったりと、保育計画にまでいい影響が広がってきています。
加えて、保護者も園での様子や子どもの表情を写真で見ることができるように。
「園でこのような活動をしたから、家でこのような質問をしてきたのか」など、子どもの理解がより深まっているようです。
新人研修にドキュメンテーションを導入。語り合う言葉に変化が
そこで今年度は、法人が運営する4つの園が集合して行う新人研修でドキュメンテーションを導入することに。新人6名の他に、研修に参加させたい職員2名を加えた計8名で実施しました。
研修は、写真に写っている子どもの様子や心情について、自分なりに想像して話してもらうというものです。
新人の場合、普段はどうしてもベテランの保育士に気を遣って自分の考えを伝えきれなかったり、言葉が固くなったりしてしまいます。
しかし新人同士であれば、「このような読み取り方もあるのだな」と素直に受け取りやすくなると考えたのです。
研修では、肯定し合う空気づくりを意識しました。
特に気をつけたのは、以下のポイントです。
- 聞き合うこと
- 意見に優劣をつけないこと
- 誰の話も正解と考えること
そうすることで、さまざまな保育の方法を知って引き出しが増えると考えたのです。
この意識のもと、「自分だったらどう考えるのか」「自分の保育なら何を試すか」といったことをグループで話し合って発表してもらいます。
はじめは硬くなっていた職員も、非常に楽しそうに話し合う姿が見られるように。
発表の際も、表情が強ばることなく自分たちの意見をしっかり話せていました。
ドキュメンテーションを使った話し合いを繰り返すなかで、子どもの声を拾って伝えるなど、次第に言葉が直感的かつ柔らかなものに変化。
ただ様子を伝えるだけにとどまらず、そのあと子どもがどう考えたのかまで言及できるようになったのです。
研修を通して、子どもの姿がより伝わるよう、ストレートに表現できるようになりました。
この取り組みを浸透させていくにはまだ時間がかかるかもしれませんが、「さまざまな見方があっていい」という考え方が園内に波及していくことを期待しています。
新人の保育士も、訊ねられたときにはしっかりと自分の意見を伝えてくれるようになりました。
写真1枚を持ち寄り、エピソードを語ることから実践
ドキュメンテーションを導入していくうえでは、難しさを感じることもあります。
それは、忙しい保育者に対していかに負担をかけずにドキュメンテーションの質を上げるかという点です。
保育者は子どもから目が離せないうえ、やるべき業務も多く、時間が限られています。
研修で学んだことをすべて取り入れようとすると負担が大きくなってしまうのです。
そのため、まずは自分の園で取り入れられる部分はどこなのか考えるようにしました。
たとえば新人研修で使う題材も、保育者がドキュメンテーションを作って持ち寄るのではなく、写真1枚を使った読み取りから始めています。
保育者自身が成長を実感できるようなドキュメンテーションの活用方法はないか、さまざまな使い方をして模索しているところです。
目的はドキュメンテーションを作成することではなく、自分のためにうまく活用すること。
それを忘れないようにしなければなりません。
ドキュメンテーションは振り返りの道具でもあり、保護者に発信する道具でもあります。
しかし、それだけに留まらない使い方を見つけたい。
そのために、 当園はこれからもさまざまな研修に参加して情報と視野の幅を広げ、できるところから取り入れてながら、園をバージョンアップしていきたいと考えています。
まとめ
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※本インタビューは『スマート保育園・幼稚園・こども園通信』2022年度2月号からの抜粋です。『スマート保育園・幼稚園・こども園通信』はルクミーをご利用中の園・施設様向けに毎月発刊している刊行物です。バックナンバーは、ルクミーをご契約頂いた園・施設さま・ルクミー みらい保育スクールへご参加頂けた方のみが閲覧出来る「ルクミールーム」内にてご覧いただけます。
※Web版とPDF版で編集の都合上、一部内容が異なる場合があります。
※記載内容はインタビュー当時の内容です。